霊長類最弱ドクターの開業ダイアリー by Dr. Olive ②
「ハイパー初期臨床研修病院、見学だけで挫折」
精神科開業医のOliveです。
「霊長類最弱」と呼ばれる私が、子育てしながら週に3日だけ開業するまでをお届けしています。
前回詳しく触れなかったが、私は精神科医である。医師になりかれこれ20年がたつ。
私は精神科以外で進路を迷ったことがない。
小さいときから心を病んだ人は自分がなんとかしたい、という気持ちがあったように思うし、高校時代には既に精神科医になりたい、と思っていた。
医学部に縁がなければ臨床心理士になろうと思い、私立大学は心理学科を受験したほどだ。
幸い公立大学に合格することができ、精神科医としての道を歩むことになった。
ところで、私の大学卒業当時は、まだ初期研修が必修化されておらず、医学部を卒業後は希望の科にストレートで入局するのが一般的だった。
しかし、この当時でも沖縄県立中部病院、飯塚病院、三井記念病院など初期研修カリキュラムで有名な病院はいくつかあり、一部の先輩は高倍率をくぐり抜けてこのようなキラキラ病院で研修していた。
6年の夏休み、私は前述の病院の一つに見学に行ってみた。
高校の部活の友人が既に研修医として働いていたので、有名病院はどんなところなのか興味があったのだ。
患者さんが次々運ばれてくる救急外来は、大変刺激的ではあったし、カンファレンスも講義も大変勉強になった。
しかし見学にきた学生も、働いているドクターも、私と明らかにタイプが違う。
向学心とバイタリティで、キラキラして見えるのだ。
私は怖気づいてしまった。
久しぶりに会う友人にも「元気でやってる?」と声をかけるつもりだったが、研修医として堂々とプレゼンしている姿を見て、すっかり気後れしてしまった。
私がクエバンを細々やってる中、同じ年齢の友人はリアルに診療している。
結局、他人行儀な挨拶しかできなかった。
そんな中、見学の最終日に自宅で飼育しているダチョウに腹部を蹴られた男性が搬送されてきた。
周りの学生が、腹部の損傷具合やどんな検査をするのか、研修医の初動を見守っている中、
「なんでダチョウを飼うことになったんやろうか…?意識はあったし、検査が終わったらめっちゃ経緯を聞きたい…」
と考えてしまう自分がいた。
やはり私は救急外来に向いていない、そもそもこんな全国有数のハイパー初期研修には、まったく向いてないと判断し、あらためて精神科にストレート入局を希望したのだった。
ちなみにそのダチョウは、もともと食用として買ったが、情が移って飼い始めたと後に聞いた。
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