月あかりでノートを書きながらBy Dr.Chelsy #5
「やっぱりわたしも幸せなお母さんになりたい」
バリバリ仕事をこなすかっこいい女性医師でありたい」「結婚して母になりたい」Dr.Chelsyが産婦人科医になり、結婚、出産し3人の子の母になるまでのBeing storyです。*Dr.OBGY noteも好評連載中!
結婚・妊娠・出産と仕事との両立について当時は今ほど深く考えていなかったが、
周りの先輩女性医師らから
結婚したいなら◯◯科はやめておいたほうが
妊娠・出産したいなら◯◯科
程度の話はあった。
どの話もあまり現実味がなかった。
目の前に、赤ちゃんを育てながら働いている医師が全然見当たらない。
子育てが一段落した年配の女性医師は何人かいたけど、
今、まさに赤ちゃん子育て中です、という人になかなか出会えなかった。
焦ることももはや忘れかけ、3年目もローテートしようかと問題先送りを考え始めた研修医2年目の12月。
私は必修であった産婦人科を回っていた。
すると、そこにいたのだ。
子供の保育園の時間でみんなよりも少し遅れて出勤してくる女性の先生が。
帰りの時間も早く17時を過ぎるとさっさと帰っていく。
美人だけれど、無表情で、仕事中は子供の話も一言もしない。ニコっともしない。
雑談などは一切することはなく、
日中はもくもくと仕事をこなし、
帝王切開も驚くほど早くて創もとてもキレイだった。
産科当直は内科・外科当直とは別の体制であり、内科当直4回のノルマをこなせば、産婦人科ローテート中は産科当直に何回入ってもいい、という制度だった。
1回当直1万円!
内科当直は正直ほぼ眠れないと思っていた方がよかったけど、
産科当直は、日によっては朝まで分娩や急患がこない日もあり内科当直よりは体が楽だと感じた。
これなら10回くらいいけるかなと思い、産科当直にかなりの回数入れた。
お金が欲しかったのもある。
特に予定のない夜を仕事で埋めたかったのも大いにある。
でも一番の理由はその先生と当直をして近づくことだった。
私が想像するお母さん像とはかけ離れたその先生の当直を狙って、私は当直を入れた。
そしてその時が来た。
「お子さん育てながら仕事するの大変じゃないですか?」
「大変だよ、やめときな」
と、一瞬で会話が終了した。
かのように思った。
けど、しばらくの気まずい無言の時間ののち、話し始めてくれた。
この当直をするためにどれだけ調整が必要かということ。
子供のアレルギーがあって今はそのことで頭がいっぱいなこと。
アレルギーのために毎日保育園にお弁当を持って行かせていること。
旦那さんの勤め先が遠くて保育園の送り迎えがいつも自分であること。
研修医のときに結婚、出産し、今に至るまでどれだけ大変だったかは、話してくれた時はおそらく内容の1/10程度も解らなかったかもしれない。
でも、お子さんの話をするときに一瞬みせてくれた微笑みが私の希望となった。
この先生は子供の話をするときに幸せそうな顔をするんだな。
やっぱりわたしも幸せなお母さんになりたい。
そして、かっこよく働きたい。
そう思わせてくれる先生だった。
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